この記事で分かること
- 基幹システムの小規模改修が高コスト・長納期化する3つの構造的原因
- Fit to Standardの副作用と「標準化+柔軟な拡張」の必要性
- ローコードによる「外付け拡張」という解決策の全体像
- Magic xpaの特徴とスパイラル開発・内製化への適性
- ERP(IFS、SAP)と連携した成功事例と導入ステップ
結論(先に要点)
- 小規模改修が高コスト・長納期になりやすいのは、要件変化・影響調査/回帰テスト・ベンダー依存という「構造」があるため
- Fit to Standardは有効だが、変化に対応できない標準化は競争力を下げる副作用がある
- 基幹システム本体に手を入れず、変化が必要な部分だけを外側に構築する「外付け拡張」が現実的な解決策
- ローコード(Magic xpa)なら、小さく作って早く出し、現場フィードバックで育てるスパイラル開発と内製化が進めやすい
リード
2025年12月4日に「小規模改修にも数百万円・数ヶ月? 基幹システム改修を速く、安くする方法~4.5万社採用ローコードで外付け拡張、業務を変えずに改修コストを最小化~」というセミナーを開催しました。今回はその講演内容のポイントについてご紹介します。
登壇者
基幹システムの小規模改修が高コスト・長納期化する3つの構造的原因
基幹システムの小規模な改修であっても、数百万円のコストと数ヶ月の納期がかかってしまう企業は少なくありません。入力画面への項目追加や帳票の追加といった、一見シンプルな変更でも高コスト化してしまう背景には構造的な問題があります。
多くの企業が、「改修費用が高い」「納期が長い」「影響範囲・品質リスクが大きい」「現場要望の変化に追いつけない」「ベンダー・SIer依存から抜けられない」といった複数の課題を同時に抱えています。
小規模改修でもコストと時間がかかる理由には、3つの構造的原因があります。
① 現場要望の変化が早い
1つ目は、作っている間に要件が変わり、やり直しが発生するという問題です。現場の要望は絶えず変化します。システムの開発に数ヶ月かかる間に、現場の状況や市場環境が変わり、当初の要件が陳腐化してしまうケースが頻発します。その結果、手戻りが発生し、納期がさらに延びてしまうのです。
② 基幹システム側を直接変更するコスト
2つ目は、基幹システムを直接改修することによる影響調査とテスト工数の膨張です。パッケージソフトでは直接変更が難しく、独自に開発した基幹システムの場合でも、改修による他システムへの影響を調査するところから始める必要があります。改修後には十分な回帰テストとリリース調整が求められ、工数が大幅に増加します。
③ ベンダー依存の開発体制
3つ目は、何をやりたいかをベンダーに正確に伝える必要があり、価格評価が難しいという問題です。基幹システムの改修は特定のベンダーにしか頼めないケースが多く、「開発コストが適正なのか」を評価しづらい状況にあります。要件をベンダーに正確に伝えるコミュニケーションコストも無視できません。
改修し続けた結果、何が起きるか
こうした状況が続くと、IT部門は保守コストに追われ、DXが進まなくなります。現場では改善スピードが低下し、競争力を失う恐れがあります。また、システムでは対応できない業務が増え、Excelや手作業が増殖する悪循環に陥るケースも少なくありません。
Fit to Standardのメリットと副作用
こうした課題を背景に、多くの企業がパッケージソフトを標準機能のまま使う「Fit to Standard」という方針を採用してきました。この方針には、業務プロセスの標準化、導入スピードの向上、法改正への迅速な対応、品質の安定といったメリットがあります。
しかし、この方針には副作用もあります。パッケージソフトの標準機能に業務を合わせることで、現場固有の強みが活きないという問題が生じるのです。例えば、ニッチな業界や企業特有の業務のやり方、独自の技術で作られる製品の特殊な工程や品質チェックの方法などには、パッケージソフトが対応できないことがあります。また、現場でプロセスを改善したくても、システム側の対応にコストや時間がかかるようでは、継続的な改善活動が阻害されてしまいます。
標準化は正しい方針です。ただし、「変化に対応できない標準化」は競争力を落とします。価格・納期・規制・サプライチェーンなど、市場の変化は加速しており、こうした変化に追随できるかどうかが競争力の分水嶺となります。そのため、標準化と柔軟な拡張を両立させることが、これからの基幹システムの理想像となります。
ローコード「外付け拡張」が有効な理由と、Magic xpaの特徴
高コスト・長納期の構造的な問題を解決する手法として、ローコード開発ツールを活用した「外付け拡張」が有効です。基幹システム本体には手を加えず、変化が必要な部分だけを外側に構築することで、業務を止めずに段階的にシステムを進化させることができます。
① 「外付け拡張」とは何か
外付け拡張とは、基幹システムはそのまま維持し、変化が必要な部分だけを外側で追加・差し替えるという手法です。基幹システムに直接手を入れないため、改修による影響範囲を外付け部分にだけ限定できます。また、小さく作ってすぐにリリースし、現場のフィードバックを受けて育てていくことが可能です。この結果、改修コストと納期を大幅に圧縮できます。
外付け拡張は、「業務を変えないまま、システムの方を変える」アプローチです。これは、現場の業務フローを変えることなく、システムの柔軟性を高められる点が大きな特徴です。
② 外付け拡張の3つの効果
外付け拡張によって得られる効果として、まず影響範囲の限定が挙げられます。基幹システムに手を入れないため、不具合や改修の影響を外付け部分に限定でき、システム全体へのリスクを最小化できます。
次に、スピーディーな改善サイクルの実現です。小さく作ってすぐにリリースし、現場のフィードバックを即座に反映してシステムを育てられます。
そして、コスト・納期の圧縮です。開発工程を簡略化し、リリースまでの期間とコストを大幅に削減できます。
③ Magic xpaの実績と4つの主要機能
外付け拡張を実現するツールとして、ローコード開発ツール「Magic xpa」が有効です。Magic xpaは、35年以上の歴史を持つ堅牢で安定したアプリケーションプラットフォームであり、日本国内で45,000社以上の導入実績があります。また、300種類以上のパッケージソフトの開発基盤として利用され、国内800社以上の開発パートナーコミュニティを有しています。
Magic xpaには、4つの主要機能があります。
- プロトタイプ・スパイラル開発
実際に動くアプリケーションを即座に作成できるため、現場のユーザーが確認しながら開発を進められます。フィードバックを素早く反映できるため、手戻りが少なく、失敗の少ないプロジェクト運営が可能です。
- 高い保守性
継承・自動変更機能により、一か所の変更がアプリケーション全体に反映されます。再利用可能な共通項目や共通部品により、開発効率が大幅に向上します。
- マルチデバイス・統合開発
Windows、Web、iOS、Android(ハンディターミナルを含む)といった多様なデバイス向けのアプリケーションを、一つのプラットフォームで開発できます。データベースもMicrosoft SQL Server、Oracle、PostgreSQL、IBM i(DB2/400)など、幅広く対応しています。
- 堅牢なプラットフォーム
DBアクセスやAPI制御はプラットフォーム側が担うため、バグが内在しにくい安定したシステムを構築できます。開発生産性はJavaの3倍、.NETの2倍とされています。
④ 外付け拡張に向く理由と開発の勘どころ
Magic xpaが外付け拡張に向く理由として、安定したプラットフォームをベースに、UIとロジックを高速開発できる点が挙げられます。開発者が保守する部分は外付けシステムだけで済むため、運用負荷が大幅に軽減されます。また、運用しながら段階的にリリース・改修できる点も、継続的な改善を前提とする現場のニーズに適しています。
開発の勘どころ
- 基幹システムの「変化が少ない」部分は維持し、「変化が多い」「自社の強み」となる部分を見極める
- データやロジック設計・実装の知識が必要(データモデルとツールの使い方のトレーニングは必須)
- SIerに伴走してもらうのが近道(最初は専門家の支援を受けながら内製化を進めるのが現実的)
株式会社オハラ様と学研様に見る、ERP連携と外付け拡張の実践
実際に外付け拡張を導入した企業の事例から、具体的な効果と活用法を見ていきます。ERP(IFS、SAP)を標準のまま維持しながら、変化が必要な領域だけを外付けで構築した2社の取り組みをご紹介します。
① オハラ様の事例:IFS連携、品質管理・専用帳票の外付け開発
光学ガラス製造を手がける株式会社オハラ様は、旧ERPシステムをフルカスタマイズで運用していました。しかし、OS更新などへの対応が難しくなり、長期運用に支障をきたすようになったため、システムの刷新を決断しました。
新システムでは、「長く使える基幹」を方針に、ERPパッケージ「IFS Applications」をノンカスタマイズ(Fit to Standard)で導入しました。標準機能で業務プロセスを標準化する一方で、光学ガラス製造には極めて特殊な工程や管理項目が多く、品質管理システムと専用帳票については標準ERPでは対応できませんでした。
そこで、この現場固有の領域をMagic xpaでアドオン開発し、APIでERPと連携する形で構築しました。稼働後も継続的に内製で機能追加を行い、現場のニーズに即座に対応できる体制を整えました。
得られた効果(3つ)
- 散在データの一元管理(品質データや帳票情報が統合され、情報へのアクセスが容易)
- 開発生産性が2倍以上に向上(ローコード開発による効率化)
- 改修が迅速化し、バグが内在しにくい運用(影響範囲が限定され、リリースサイクルが短縮)
オハラ様の事例は、Fit to Standardと外付け拡張の組み合わせにより、20年以上使える基幹システムを実現した好例です。標準化のメリットを享受しながら、現場固有の強みを活かせる柔軟性を両立させています。
② 学研様の事例:SAP連携、コールセンター受注システムの構築
教育・出版事業を展開する学研様は、SAP ERPへの全面刷新に伴い、コールセンターの受注システムも見直すことになりました。書店向け・出版向けの業務には独自の商慣習があり、標準のSAP機能だけでは対応できない部分がありました。
そこで、Magic xpaで構築された出版向けのパッケージソフトを導入し、これを受注システムとして活用しました。さらに、Magic xpi(連携ツール)を介してSAPの在庫データベースとリアルタイム連携させることで、コールセンターからの問い合わせに対して即座に在庫情報を回答できる仕組みを構築しました。
得られた効果
- 問い合わせへのレスポンス向上(在庫情報をリアルタイムで参照し、回答スピードが大幅に改善、顧客満足度が向上)
- 基幹システムはSAPのまま維持(ERP本体に手を加えず、外付けシステムとして構築したため、SAP本体の安定性を損なわない)
学研様の事例は、基幹システムを標準のまま維持し、周辺(フロント)を外付けで短期実現した好例です。Magic xpaとMagic xpiを組み合わせることで、「つくる」と「つなぐ」を同時に実現しています。
③ 2社に共通する成功ポイント
- 基幹システムの標準化を維持しつつ、現場固有のニーズには外付け拡張で対応する明確な切り分け
- ローコード開発による高速開発とスパイラル改善で、現場のフィードバックを即座に反映
- API連携により、基幹システムと外付けシステムのデータを統合し、業務全体の効率化を実現
どちらの事例も、「標準化+柔軟な拡張」という基幹システムの理想像を体現しています。
基幹システム改修の新たなアプローチ:外付け拡張による内製化とDX推進
基幹システム改修が高コスト・長納期化する構造的な問題は、ローコードによる外付け拡張という手法で解決できます。業務を変えずにシステムの柔軟性を高めることが、競争力維持と内製化・DX推進の鍵となります。
① 外付け拡張で実現できること
- 改修コストの削減
基幹システムへの直接的な改修を避けることで、影響調査や回帰テストの工数を大幅に削減できます。
- スピード化
小さく作ってすぐにリリースするスパイラル開発により、現場の要望に迅速に対応できます。
- 既存資産の活用
基幹システムはそのまま維持し、長年蓄積されたデータやロジックを活かしながら、新しい機能を追加できます。
② 導入ステップの2つのパターン
パターン1:SIerにまるっとお願いする
基幹システムの運用と外付け拡張の開発をすべてSIerに委託します。自社のIT部門のリソースが限られている場合や、初期段階で安定した運用を優先したい場合に適しています。
パターン2:内製化を目指す
基幹システムの運用はSIerに任せつつ、外付け拡張の開発・改修は自社で行います。最初はSIerに伴走してもらいながら、徐々に内製化を進めていく形です。現場のニーズに素早く対応しながら、外付け拡張システムを育てていくことができます。
どちらのパターンを選ぶかは、企業のIT体制や内製化の方針によって異なります。しかし、最終的には内製化を目指すことで、改修スピードと競争力を高められます。
③ 内製化・DX推進への貢献とベンダー依存脱却
副次的な効果
- 内製化の推進
ローコード開発により、専門的なプログラミング知識がなくても開発に参加しやすくなります。社内のエンジニアが外付けシステムの開発・保守を担うことで、IT部門の成長とDXの加速につながります。
- ベンダー依存の解消
基幹システムの改修を外部ベンダーに完全依存するのではなく、変化の多い部分を自社でコントロールできるようになります。これにより、コストの透明性が高まり、適正価格での開発が可能になります。
- 継続的な改善文化の定着
現場のフィードバックをすぐにシステムに反映できるため、業務改善のPDCAサイクルが回りやすくなります。
小規模改修が高コストなのは「構造」の問題であり、外付け拡張で業務を変えずにスピードとコストを改善できます。ローコード開発ツール「Magic xpa」は、既存資産を活かしながら基幹システムを進化させる現実的な解決策です。
よくある質問
- Q1. 小規模改修でもベンダーから数百万円の見積もりが出ました。Magic使用中でもこのような金額になるのでしょうか?
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20年以上Magic xpaを使用している企業でも、「小規模改修でベンダーから数百万円の見積もりが出る」というケースがあります。Magic xpaを使っていても、開発をすべてベンダーに委託していると、どうしてもコミュニケーションコストや工数が膨らみやすくなります。そのため、内製化やパートナー企業との密な連携を進めることで、コストを抑えられる可能性が高まります。また、外付け拡張の範囲を明確にし、影響範囲を限定することで、見積もりの透明性を高めることも重要です。
- Q2. IBM i(AS/400)との連携は可能ですか?
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IBM i(AS/400)との連携については、Magic xpaはDB2/400に対応しており、IBM iの資産を活かした開発が可能です。ただし、基幹システムと外付け拡張の切り分けをどう設計するかが重要であり、既存のIBM i資産をどこまで維持し、どこから外付けで構築するかを見極める必要があります。具体的な切り分けについては、導入前にSIerやパートナー企業と相談することが推奨されます。
- Q3. Magic xpaが不向きな業務はありますか?
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Magic xpaは業務システムの開発に強みを持つ一方、ハードウェアの直接制御など、低レベルのシステム制御が必要な領域には不向きです。例えば、製造機械や計測器を直接制御するようなシステムは、Magic xpaで開発できませんが、制御用言語で書かれたプログラムをMagic xpaと連携することは可能です。しかし、CADデータとの連携やマスター管理、帳票出力など、業務アプリケーション層の処理については得意分野であり、多くの製造業でも活用されています。
また、質疑応答では他にも複数の質問が寄せられました。
- SAP ERPへの直接連携は可能か?
Magic xpaから直接SAPへ連携することも可能ですが、Magic xpi(データ連携ツール)を併用することで、より安全かつ柔軟な連携が実現できます。
- 他社のローコードツールからの乗り換えサポートはあるか?
マイグレーション支援のサービスがあり、既存システムの資産を活かしながらMagic xpaへ移行するサポートが提供されています。
- ファイルメーカーとの違いは?
Magic xpaは大規模なトランザクション処理や複雑な業務ロジック、バッチ処理に強みがある点が特徴です。一方、ファイルメーカーは小規模な業務アプリケーションやプロトタイピングに適しています。
- 病院関係への導入事例はあるか?
病院や介護施設向けのパッケージソフトがMagic xpaで開発されており、データ連携やDWH(データウェアハウス)との統合事例もあります。
まとめ:基幹システム改修の新たなアプローチ:外付け拡張による内製化とDX推進
基幹システムの小規模改修が高コスト・長納期化する背景には、現場要望の変化、基幹システム直接改修のリスク、ベンダー依存という3つの構造的原因があります。これらの課題を解決する手法として、ローコード開発ツール「Magic xpa」を活用した「外付け拡張」が有効です。
外付け拡張により、基幹システムはそのまま維持しながら、変化が必要な部分だけを外側に構築できます。オハラ様や学研様の事例が示すように、ERPを標準のまま維持しつつ、現場固有のニーズに柔軟に対応できる仕組みが実現可能です。
さらに、外付け拡張は内製化やDX推進にも貢献します。ベンダー依存から脱却し、現場のフィードバックを即座にシステムに反映できる体制を整えることで、競争力の維持・強化につながります。
「標準化+柔軟な拡張」という基幹システムの理想像を、ローコード開発ツールで実現する。それが、これからの基幹システム改修の新たなアプローチです。
