
この記事で分かること
- 製造業でシステム連携の停止リスクと変更負荷が高まっている背景
- システムのサイロ化や手作業運用が現場にもたらす課題
- 高可用性と柔軟な変更対応を両立するノーコード連携基盤の考え方
- Magic xpi の特長と、ETL ではなく EAI として活用する意味
- 製造業の導入事例と、スモールスタートで進める実践ポイント
リード
2025年9月11日、「止められない製造業のシステム連携、安定稼働と柔軟な変更をどう両立する? ~マスタ・在庫・生産・IoT 各種データをつなぐ、高可用性に優れたノーコード基盤~」というセミナーが開催されました。本記事では、その講演内容のポイントをご紹介します。
登壇者
マジックソフトウェア・ジャパン株式会社 マーケティング部 部長 渡辺 剛
製造業でシステム連携の重要性が高まる一方、現場は「止められない」運用を求められている
はじめに、多品種少量生産や人材不足、サプライチェーンの複雑化が進む製造業において、システム連携が単なる効率化ではなく、事業継続を支える基盤になっている現状を解説します。
製造業では、多品種少量生産への対応、製品改訂頻度の上昇、工程変更の迅速化、品質維持、人材不足への対応が同時に進んでいます。こうした状況では、ERP、MES、在庫管理、生産管理、IoT 機器など、現場のあらゆるシステムから発生するデータをつなぎ、必要な場所で使える状態にしておくことが欠かせません。もはやシステム連携は、業務を便利にするための補助機能ではなく、製造現場を止めないための前提条件になっています。

連携基盤の重要性が増している理由は、単にデータ量が増えているからではありません。経営判断の迅速化、設備保全や予防保全、業務品質向上、さらには DX や AI 活用の土台として、データを分断なく扱えることが求められているからです。特にプロセス産業では、工場データとサプライチェーンデータを結び付けられるかどうかが、改善スピードや意思決定の精度に直結します。
参加者への投票でも、データ基盤の強化で重視する観点は、作業効率化、可視化、安定性、柔軟性のいずれか一つに偏るのではなく、ほぼ同程度に重視される傾向が見られました。製造業の現場が求めているのは、単純なコスト削減だけでも、可視化だけでもありません。止まらず、変化に追随し、現場で使い続けられる仕組みが同時に必要とされているのです。
システムのサイロ化と従来型連携の限界が、高可用性と柔軟性の両立を難しくしている
次に、工場や部門ごとにシステムが分散し、変更のたびに個別開発や手作業が発生することで、連携基盤が属人化しやすい構造的な課題を明らかにします。
製造業の現場では、各工場ごとに異なる MES が導入され、そこへ IoT 機器やクラウドサービスが追加されることで、システム環境が複雑化しやすくなっています。データがそれぞれのシステムに閉じたままだと、業務フローも分断され、入力・転記・整合性確認といった手作業が増えます。その結果、ミスや漏れが起こりやすくなり、即時性も失われ、生産性の低下を招きます。

問題は、こうした状態が単なる不便さにとどまらないことです。マスタ変更や拠点追加のたびに IT 部門へ依頼が集中すれば、変更対応のたびに工数が膨らみます。しかも、連携サーバーが止まれば業務フロー全体が止まり、操業停止や生産ロスに直結しかねません。安定稼働を重視すると変更に弱くなり、変更しやすさを優先すると運用が不安定になるというジレンマが、従来の連携方式では起こりやすかったといえます。
その背景にあるのが、従来型の階層モデルです。SCADA や PLC などの制御システムから MES、生産管理、ERP へとデータを上げていくピラミッド型構造は、バッチ処理やファイル受け渡しを前提にした連携には適していました。一方で、IoT 時代のように連携対象が増え、双方向かつリアルタイムの連携が求められる環境では、より柔軟なプラットフォーム型構造が必要になります。

ここで重要になるのが、ETL と EAI の違いです。ETL は、複数のデータソースからデータを抽出・変換し、データウェアハウスや BI に渡して分析に生かす用途に向いています。これに対して EAI は、受発注や在庫更新のように、即時性が求められる業務システム同士をリアルタイムかつ双方向でつなぐための基盤です。製造業の現場で必要なのは、分析用のデータ統合だけでなく、業務そのものを止めずに動かし続けるための仕組みであり、その意味で EAI の発想が重要になります。

Magic xpi が実現するノーコード連携基盤──高可用性設計と柔軟な運用変更を両立する方法
続いて、ノーコード連携基盤「Magic xpi」が、豊富な標準アダプタやトリガー、高可用性設計によって、製造業のシステム連携をどのように支えるのかを事例とともに紹介します。
Magic xpi は、システム間のデータ連携と処理を集中管理する EAI ツールです。ドラッグ&ドロップで連携フローを設計でき、システム A から受け取ったデータをシステム B へどのように渡すかを、視覚的に整理しながら構築できます。コードを前提にした個別開発ではなく、フローとして全体像を見渡しながら設計できるため、変更が発生しても影響範囲を把握しやすく、属人化を抑えやすい点が特徴です。
標準アダプタも豊富で、SAP、Oracle EBS、Microsoft Dynamics、Salesforce、Microsoft 365、Google Cloud、AWS、Azure、REST API、SOAP、MQTT、OPC など、主要な業務システムやクラウドサービス、通信プロトコルに対応しています。さらに、ファイル監視、データベース監視、スケジューラー、MQTT トリガーなど、多様な起動条件を組み合わせることで、リアルタイム連携にもバッチ処理にも対応しやすい構成になっています。

製造業で使いやすい理由の一つが、差分抽出機能です。追加・更新・削除されたデータの差分だけを取得し、必要なデータだけを連携できるため、大量データを扱う場面でも無駄な処理を抑えやすくなります。設備異常の即時検知や在庫状況のリアルタイム把握では即時連携を、日次の生産実績集計や月次の会計データ連携ではバッチ処理を選ぶ、といった使い分けを一つの基盤で考えやすい点も実務的です。
もう一つの大きな特徴が、高可用性です。Magic xpi は、アクティブ-スタンバイ構成によるサーバー冗長化、定期的なヘルスチェック、障害発生時の自動フェイルオーバー、共有ストレージによるデータ整合性の確保といった機能を備えています。止められない業務に連携基盤を組み込む以上、平常時の便利さだけでなく、障害時にどう継続するかまで含めて考えられていることが重要です。

実際の導入事例として、株式会社ミルボンでは、従来ツールではモニタリングできず、障害対応が後手に回りやすいことや、データ量増加による処理性能低下が課題になっていました。Magic xpi の導入後は、常時監視とアラート通知により障害を把握しやすくなり、業務システムとの結合度を下げたことで改修やリプレイスの影響も抑えやすくなっています。成果として、処理時間は従来の約 1/2 に短縮され、高負荷や障害に強い安定基盤の構築につながりました。

Mipox 株式会社の事例では、SAP ERP のデータを営業や経営層が直接参照できず、毎日 2 名でエクスポートと Excel 加工を行う運用が続いていました。Magic xpi Cloud Gateway を導入し、SAP の請求伝票データを自動で Salesforce へ連携したことで、翌朝には最新データを確認できる体制が整い、納期回答や売上確認のスピードが向上しています。手作業を排除した結果、月 30 人日以上の工数削減が確認され、浮いたリソースを他業務へ振り向けられるようになりました。まず小さく始めて早く効果を出し、その後に活用範囲を広げていく進め方の好例といえます。

ノーコード基盤の価値は、開発のしやすさだけではありません。連携フローを見れば、どこで何をしているかを把握しやすく、変更箇所も見つけやすくなります。さらに、構成のドキュメント化やチームでの分担作業にもつなげやすいため、担当者個人の頭の中に運用知識が閉じてしまう状態を避けやすくなります。製造業において、安定性と柔軟性を両立するとは、技術の選定だけでなく、運用を継続できる体制まで含めて設計することだといえるでしょう。
製造業のデータ活用を前に進めるには、止まらず、変化に追随できる連携基盤が欠かせない
最後に、製造業のシステム連携では、安定稼働と柔軟な変更対応の両立が欠かせず、その土台としてノーコードかつ高可用性を備えた連携基盤の整備が重要であることを整理します。
製造業のシステム連携で本当に求められているのは、単にデータをつなぐことではありません。工場、基幹系、在庫、物流、IoT、クラウドといった多様なシステムを横断しながら、業務を止めず、必要な変更を素早く反映し、将来のデータ活用にもつなげられる状態をつくることです。そのためには、変更のたびに個別開発へ戻る運用ではなく、連携そのものを基盤として捉え直す必要があります。
現実的な進め方として有効なのが、スモールスタートです。二重入力の解消、日次レポート作成の自動化、現場から経営層へのデータ受け渡しの効率化など、効果が見えやすいテーマから始めることで、現場にも経営層にも価値を伝えやすくなります。そうして成果を積み上げていくことが、将来的な AI 活用や設備保全の高度化、全社的なデータ活用の前進にもつながっていきます。
FAQ
Q1. ETL と EAI は何が違うのですか?
A. ETL は、複数のデータソースからデータを抽出・変換し、分析基盤や BI に渡すための仕組みとして使われることが多く、主にバッチ処理や単方向の連携に向いています。EAI は、受発注や在庫更新のように即時性が求められる業務を、リアルタイムかつ双方向でつなぐための基盤です。製造業で業務を止めずに動かす観点では、EAI の役割が重要になります。
Q2. Magic xpi は ERP、MES、IoT 機器など既存システムとも連携できますか?
A. はい。SAP、Salesforce、Microsoft 365、AWS などの主要システムやクラウドサービスに対応する標準アダプタに加え、REST API、SOAP、MQTT、OPC などの通信プロトコルにも対応しています。ERP、MES、IoT 機器、クラウドサービスが混在する環境でも、連携基盤として活用しやすい構成です。
Q3. 100 万件超の大量データ連携処理でも活用できますか?
A. 活用は可能です。ただし、単純な受け渡しか、加工を伴うか、どの時間内に処理を完了させる必要があるかによって、必要なサーバースペックや構成、処理設計は変わります。大量データを前提とする場合は、差分抽出や処理方式の設計も含めて最適化を考えることが重要です。
Q4. オンプレミス環境でも利用できますか?
A. はい。クラウドでの利用だけでなく、オンプレミス環境のサーバーへ導入して運用することも可能です。既存のシステム構成や運用ポリシーに合わせて選択しやすい点も、製造業で採用しやすい理由の一つです。
Q5. 導入はどこから始めるのが現実的ですか?
A. まずは、効果が見えやすい小規模なテーマから始めるのが現実的です。たとえば、二重入力の削減、日次レポートの自動化、営業や経営層が必要なデータを素早く確認できるようにする取り組みなどが候補になります。小さく始めて効果を確認し、その後に対象範囲を広げていく進め方が、社内合意も得やすくなります。